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映画『清須会議』評 [書評]

三谷幸喜の映画『清須会議』を観てきました。
かみさんと一緒にです。

印象として、本人も書いてますが、三谷幸喜作品としては思いっきり真面目に、まるで大河ドラマのように(三谷幸喜が脚本を書いた「新撰組!」よりもさらに大河ドラマっぽく)きっちりと歴史の場面を描いてます。

清須会議とは、天正十年6月、本能寺の変で織田信長が討たれた後、討った明智光秀も秀吉に破れて敗死してから、主立った織田家の重臣が織田家発祥の地とも言える(実際の発祥は勝幡城ですが、信長が尾張統一を成し遂げた頃の本拠地は清須)清須城に集まって、織田家のこれからの体制を話会ったという会議である。主立った重臣とは
  ・織田家筆頭家老 柴田勝家(越前を領有し、北陸探題)
  ・織田家宿老 丹羽長秀(若狭を領有し、織田信孝の補佐として四国攻め担当を予定)
  ・織田家部将 羽柴秀吉
  ・信長の乳兄弟 池田恒興
の4人である。信長死去前の序列だと、関東管領の滝川一益がナンバー2かナンバー3のはずであったが、信長死去による混乱の中で北条に急襲されて敗北し、新領地の関東を追われて敗走の最中だったので、この会議には間に合わず。

信長の跡取りとしては、本来は長男信忠がいるが、信忠も明智光秀に攻められて二条城で敗死しているため、次男信雄、三男信孝、そして信忠の嫡男の三法師(当時3歳と言われる)の3人が候補となり、柴田勝家が三男信孝を押したものの、最後は信長の嫡男三法師が跡取りとなる、というのが会議の顛末である。

この映画は、この4人に(三谷幸喜のアイディアとして)官僚の前田玄以を加えて5人による会議とその幕間の動きを極めて真面目に描いたもので、見応えがあった。一方の軸となる信長の妹のお市の方(鈴木京香)に惚れて会議の切所で盟友丹羽長秀の信頼を失う柴田勝家(役所広司)と、光秀を討ったことから上り調子で天下を狙う羽柴秀吉(大泉洋)とが終始対立しているが、その間で揺れ動く丹羽長秀(小日向文世)と池田恒興(佐藤浩市)の心理描写が実にうまい。最後の最後で丹羽長秀が勝家を裏切るあたりの描き方は、映画を観た誰もが、そりゃあ裏切るだろうよ、と思わせるような説得力であり、いきなり宿老並みにされて戸惑う池田恒興の描き方もうまい。この4人の心理劇として、舞台公演にしても充分に成立する脚本だと思う。

この映画で感心したのは、清須城の描き方である。織田家初期の頃の本拠地とは言え、安土城などと比べると小さな城で、確かに集まった重臣4人にお市の方や三法師(とその母)が、庭を挟んですぐ近くに泊まっていた可能性は大であり、この点は映画を観て初めて、なるほどと思った。

史実として確定してない部分で、映画を面白くするために大胆に取り入れたのは三法師の母の設定である。実は織田信長の長男信雄の嫡子は三法師だが、その母親は諸説あってわかっていない。その説の1つに、信長が武田信玄と親交があったころに婚約が決まっていた信玄の娘松姫が母親という説があり、この映画ではその説を採用して、三法師の母として剛力彩芽を抜擢している。

なるほどと思ったのは、実は三法師が跡目を相続するにあたって、信長の三男信孝の出生の筋目が会議で問題とされたので、その点で三法師は問題とされてないのは史実であり、その意味ではその母親が武田信玄の娘なら、出自としては充分であり、ひょっとしたら本当に松姫が三法師の母かもととも思った。

戦国時代とはいえ、出自は極めて重視される場合が多い。例えば信長の兄弟はたくさんいるが、どうやらその中で、信秀正室の土田御前の腹から生まれたのは、以下の5人と考えられる。
 ・織田信長
 ・織田弾正忠信勝(一般には信行と呼ばれ、信長と家督を争い、謀殺される)
 ・織田喜六郎秀孝(15歳の時、誤って家臣に射殺される)
 ・織田三十郎信包(のぶかね 信長に重く用いられ、長命している)
 ・お市の方
早くに死んだ信勝と秀孝は別として、信包とお市の方はいずれも織田家で重要な存在となっていて、信長の他の弟たち(信治、信興、秀成、信照、長益)とは扱いが違っている。

同じように信長の子たちをみると、正室同様に扱われていた生駒吉乃から生まれた子は信忠、信雄と、家康の長男に嫁いだ徳姫の3人であり、一方で清須会議で柴田勝家が押した三男信孝は低い身分の女の子で、同い年にもかかわらず、次男信雄とは明確に扱いが区別されていた。本能寺の時点で信雄の官位は正五位下・右近衛中将に対し、三男信孝は従五位下侍従2ランク差がある。それも、信孝はかなり有能な男とされててのこの差だから、出生の筋目の差は大きかったのだと思う。

その意味で、出自を問題として信孝が退けられたにもかかわらず、あっさりと三法師が跡目になったことから言って、三法師の母は筋目が正しい、つまり武田信玄の娘松姫だったというのは、それなりに納得できる。

映画の中で、脚色であると思うが、史実と違う点は、会議の最後で滝川一益が間に合ってること。実際には一益が尾張に帰って来た時には、とっくに清須会議は終わっていた。

三法師と母松姫が本能寺の変の折りに京都にいたのも脚色かと思ったが、これは史実として一説にいたのではないかという研究成果があるようで、これはまんざら嘘でもなく、諸説の中で映画に都合がいい説を採った、ということらしい。

映画の後半でお市の方が積極的に柴田勝家を虜にしようとしているが、これは最近の研究でもそうなのではないかという説もあり、これも嘘ではない。それに加えて信孝が動いたという説もあり、反秀吉で積極的だったのは、勝家というよりもお市・信孝というのは、史実としてありえるようだ。

このように、この映画はかなり大まじめに史実を踏まえていて、私としては是非観て下さいと推薦したい感じの、気に入った映画です。

この『清須会議』、脚本の三谷幸喜さん自身による原作本の他、いろいろ本が出てるみたいです。
下にまとめたので、よろしかったらどうぞ。
Kndle版もかなりありますね。


清須会議 (幻冬舎文庫)

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  • 作者: 三谷 幸喜
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2013/07/26
  • メディア: 文庫




清須会議

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  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • メディア: Kindle版




清須会議

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  • 作者: 三谷 幸喜
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: 単行本




三谷幸喜 創作を語る

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  • 作者: 三谷 幸喜
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




誰も書かなかった 清須会議の謎 (中経の文庫)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 中経出版
  • 発売日: 2013/09/21
  • メディア: 文庫




誰も書かなかった 清須会議の謎 (中経の文庫)

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 中経出版
  • 発売日: 2013/09/30
  • メディア: Kindle版



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